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  1. 印刷労働者は、最も早く組合運動に目ざめる職種の一つである。なぜなら、彼らは、ことばをあつかっており、字を読むことができるからである。彼らは物質化されたことばである活字を拾い、印刷し、本をつくる。それらの物質化されたことば(活字、本)は他者のものであるが、印刷労働者は、それを操作することを学び、ことばを自らのものとして使える状況の最も近くにいるのだ。さらに、その〈ことば〉によって、世界を読み、世界を組織することを知ろうとするのである。

    日本でも印刷工は、最も早くから労働運動に参加している。一八八四年にはすでに、東京の秀英社市ヶ谷工場の池田竹次郎が活版工組合をつくろうとしたが、仲間の理解を得ることができず失敗している。ここで注目すべきなのは、この最初の印刷工組合の試みは、政治的色彩をもたず、純然たる経済的社会運動であったことである。この傾向は、印刷工組合のその後の歴史にもひきつがれる。おそらくそれは、印刷がことばのメディアをあつかうものであり、組合運動が政治的色彩をこえて、人間的価値を求めるものとして意識されていたからではないだろうか。イギリスのウイリアム・モリスは、美しい本をつくることのうちに、ユートピア的社会主義を夢見た。本をつくる労働者は、ことばもまた物質であることをはっきりと意識しているが、同時に、物としてのことばによって、世界を内面的にとらえることを放棄してはいないのである。